大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和36年(ラ)750号 決定 1961年12月01日

抗告人 真野キヨ 外一名

相手方 渡辺直 外一名

主文

本件抗告を却下する。

抗告費用は抗告人らの負担とする。

理由

抗告人ら代理人は、原決定を取消す、新潟家庭裁判所高田支部昭和三十六年(家イ)第三七号、第三八号遺産分割調停事件を東京家庭裁判所に移送する、との決定を求め、その抗告理由は別紙記載のとおりである。

家事審判法並びに家事審判規則に基く手続において為された審判決定に対しては、同法並びに同規則の定めるところによつてのみ即時抗告の申立をすることができるのであるが、本件のように、抗告人らが家事調停事件移送の申立をしたのに、裁判所が移送の審判をしなかつた場合には、これに対し即時抗告を為しうる旨の規定は存在しない。家事審判規則は第四条の二において、第四条の規定による移送の審判に対し即時抗告の申立をすることができる旨を定めているに過ぎないのである。従つて、本件即時抗告の申立は不適法として、これを却下すべきものである。

のみならず、家事審判規則第四条は裁判所が職権によつて事件を移送する場合を規定しているけれども、当事者が移送の申立権を有することは規定していない。原裁判所も、抗告人らの移送の申立に対し、却下の決定をしたのではなく、ただ同裁判所の調停委員会において本件調停手続を開催する旨を抗告人らに通知したに過ぎないことは、記録七三丁の書面の控によつて明らかであるから、抗告の対象となる決定も存在しないわけである。従つて、この点からみても本件抗告は不適法である。

なお、記録によれば、本件は、はじめ相手方らが遺産分割の審判を求めたものであつて、調停の申立をしたものではないところ、被相続人両名の最後の住所はいずれも新潟県高田市であるから、右審判申立事件の管轄裁判所が新潟家庭裁判所高田支部であることは、家事審判規則第九九条によつて明らかである。従つて、同裁判所が事件を調停に付した場合、同裁判所において同事件を処理するのは相当であつて管轄違いとはいえない。従つて、本件調停を同裁判所に係属させることが法律上の管轄の規定に反するという抗告理由はこれを採用するをえない。

さらに、記録第七五丁の決定によれば、本件審判事件を調停に付する旨の決定は、すでに、取消されたことが認められるから、抗告人らが移送を申立てた調停事件は、現在係属していないわけであつて、この点からも本件抗告は理由がない。

よつて、抗告費用の負担について、民事訴訟法第八九条第九五条に従い主文のとおり決定する。

(裁判長判事 薄根正男 判事 元岡道雄 判事 小池二八)

抗告理由<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例